公式計算式とシミュレーターの仕組み
FIFAランキングは、各国代表チームの強さを数値化した世界共通の指標です。2018年8月から採用されている現行の計算方式について、実例を交えながら詳しく解説します。
FIFAランキングは2018年8月から採用されている「ポイント制」システムで、各チームが保有するポイントの多さで順位が決まります。ポイントは試合結果によって増減し、毎月更新されます。
計算の三大要素
ポイント変動 = I × (W - We)
• I(Importance): 試合の重要度係数(親善試合:5-10 → ワールドカップ決勝:60)
• W(Actual Result): 実際の試合結果(勝利:1.0、引き分け:0.5、敗北:0.0)
• We(Expected Result): ポイント差から算出される期待勝率
重要なのは、単純な勝敗だけでなく、「相手の強さ」と「試合の重要度」が大きく影響する点です。強い相手に勝てば多くのポイントを獲得でき、弱い相手に負ければ大幅にポイントを失います。
FIFAランキングは単なる序列表示ではなく、実際のサッカー界に大きな影響を与える重要な指標です:
大会の組み合わせ抽選(シード決定)
• ワールドカップ抽選会: 上位ランクチームが第1シードに配置され、グループステージで有利な組み合わせを確保
• 大陸選手権: UEFA EURO、コパ・アメリカ、アジアカップなどの組み合わせ抽選でシード権を決定
• プレーオフマッチ: ワールドカップ予選プレーオフでホーム&アウェーの順番やシード権を決定
ワールドカップ出場枠の配分
• 大陸連盟への出場枠決定: FIFAランキング上位国が多い大陸連盟により多くの出場枠が配分
• プレーオフ進出権: 各大陸予選で直接出場できなかったチーム間のプレーオフでも、ランキングが進出権や対戦相手決定に影響
このように、ランキングの数ポイントの差が最終的に出場権やグループ分けという重大な結果の違いを生むため、各国代表チームにとって極めて重要な指標となっています。
FIFAランキングは、チェスやeスポーツで使われる通常のEloレーティングシステムをサッカー界の特性に合わせて改良した独自のシステムです:
最大の違い:重要度係数の導入
• 通常のElo: 相手との実力差のみで計算(K値は固定または段階的)
• FIFAランキング: 試合の重要度を特別に考慮した重み付けシステム
サッカー特有の特徴
• PK戦の特別扱い: 勝者0.75点、敗者0.5点として「完全な勝敗」ではない扱い
• ノックアウト保護: 決勝トーナメントで負のポイント変動時はポイント減少なし
• 期待値計算: 600ポイント差で約90%勝率の設定
なぜ改良が必要だったのか
• 試合頻度の少なさ: サッカー代表戦は年数試合のみで、一試合の価値が高い
• 大会形式の多様性: 親善試合からワールドカップまで価値が大きく異なる
• 政治的・商業的配慮: 大会主催者や放送局にとって「重要な試合」の価値を反映する必要
結果として、「強豪国同士のワールドカップ決勝」と「親善試合」では同じ結果でも獲得ポイントに12倍もの差が生まれ、より現実的な強さ評価が可能になっています。
試合の種類によって重要度係数が設定されています:
• 親善試合(国際カレンダー外): 5
• 親善試合(国際カレンダー内): 10
• ネーションズリーグ(グループ): 15
• ネーションズリーグ(プレーオフ・決勝): 25
• 大陸選手権予選・ワールドカップ予選: 25
• 大陸選手権決勝大会(準々決勝まで): 35
• 大陸選手権決勝大会(準々決勝以降): 40
• ワールドカップ本大会(準々決勝まで): 50
• ワールドカップ本大会(準々決勝以降): 60
※ FIFA公式文書にはコンフェデレーションズカップ(重要度40)の記載がありますが、2021年に廃止されたため本シミュレーターでは除外しています。
ワールドカップ準々決勝以降が最も重要度が高く、親善試合の12倍の影響力があります。
期待結果は両チームの現在のポイント差から計算されます:
We = 1 / (10^(-dr/600) + 1)
• dr: 自チームのポイント - 相手チームのポイント
この式により:
• ポイントが同じチーム同士なら期待結果は0.5(引き分け相当)
• ポイント差が大きいほど、強いチームの期待勝率が高くなる
• 600ポイント差で期待勝率は約90%になる
仮に以下の条件で計算してみましょう:
• 日本: 1500ポイント(20位)
• ドイツ: 1650ポイント(15位)
• 試合: ワールドカップ本大会・準々決勝以降(I = 60)
• 結果: 日本 2-1 ドイツ
計算過程:
1. ポイント差(dr) = 1500 - 1650 = -150
2. 日本の期待結果(We) = 1 / (10^(150/600) + 1) ≈ 0.36
3. 日本の実際の結果(W) = 1.0(勝利)
4. 日本のポイント変動 = 60 × (1.0 - 0.36) = +38ポイント
同様にドイツは-38ポイントとなり、日本は1538ポイント、ドイツは1612ポイントに更新されます。
FIFA計算式には以下の特別ルールがあります:
1. PK戦の特別扱い
• 勝者:0.75ポイント(「半分の勝利」扱い)
• 敗者:0.5ポイント(引き分け扱い)
2. ノックアウトステージの保護
• 決勝トーナメントで負のポイント変動となる場合、ポイントは減少しない
• 例:格下チームにPK勝ちした場合でも、ポイントは減らない
3. よくある誤解
• 得失点差は無関係(1-0も5-0も同じ勝利)
• 過去の成績減衰なし(ポイントは永続的に蓄積)
• 連勝ボーナスなし(各試合は独立計算)
このシミュレーターは、上記の公式計算式を忠実に再現しています:
1. 初期データ: 最新のFIFA公式ランキングデータを使用
2. 試合入力: チーム、スコア、試合種別を選択
3. リアルタイム計算: 入力された試合に基づいてポイントを再計算
4. 順位更新: 全チームのポイントを比較して順位を更新
複数の試合を連続して入力することで、大会全体の影響や将来の順位変動を予測できます。